飲食店の正社員の給料はどれくらいもらえるのか?
飲食店の仕事は、離職率が高く、その理由のひとつは飲食業界の平均年収が低いことがあげられます。
労働条件がきつく、サービス業ならではのコミュニケーションのトラブルなどから、長く働くことができないケースもあり、さらに給料が低いと長続きする人も少ない状況です。
一方、飲食業界に根付いて働き、将来の目的が定まっている人や、計画的に年収アップする方法を心得ている方にとっては、飲食業界で働くメリットも多くあります。
そこで、本記事では、飲食店従業員の平均年収と、年収をアップするための方法について解説していきます。
目次
飲食店従業員の平均年収
飲食店の平均年収は、業界全体と比較すると低いイメージがあります。
また、業務的には、きつく忙しいというイメージが定着していることから離職率が高いという現状もあります。
厚生労働省の「令和5年雇用動向調査結果の概況」の調査では、産業全体の平均離職率が15.4%で、飲食業は18.2%と高い数値となっています。
ただし、飲食業という職種に関心があり、将来的に自分のお店を持ちたい方や、これからスキルを磨いて飲食業界で頑張っていこうという方は、飲食業界の平均年収について把握しておくことで計画的に効率よく転職活動を行うことも可能です。
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によりますと、飲食業界の平均年収は、
259.5千円で、業界全体の平均年収、318.3 千円です。
飲食業界の平均年収は、他の業界と比較した場合、最も低く、一番平均年収の高い「電気・ガス・ 熱供給・水道業」との年収の差は、150万円以上となっています。
厚生労働省・令和5年賃金構造基本統計調査 産業別にみた賃金 | |
業種 | 平均年収 |
サービス業宿泊業,飲食サービス業 | 259.5千円 |
建設業 | 349.4千円 |
製造業 | 306.0千円 |
電気・ガス・ 熱供給・水道業 | 410.2千円 |
情報通信業 | 381.2千円 |
運輸業,郵便業 | 294.3千円 |
卸売業,小売業 | 319.6千円 |
金融業,保険業 | 393.4千円 |
不動産業,物品賃貸業 | 340.8千円 |
学術研究,専門・技術サービス業 | 396.6千円 |
生活関連サービス業, 娯楽業 | 278.7千円 |
教育,学習支援業 | 377.2 千円 |
医療,福祉 | 298.0千円 |
複合サービス事業 | 302.0千円 |
サービス業(他に分類されないもの) | 285.7千円 |
鉱業,採石業,砂利採取業 | 366.7千円 |
飲食業界で働く年齢別の年収については、50〜54歳で293.2千円が最も高く、一方、19歳から始めた場合の初任給は、181.4千円からスタートして年齢を重ねるごとに賃金が上がっていく傾向です。
また、55歳を超えると、徐々に年収が減少していきます。
厚生労働省・令和5年賃金構造基本統計調査 年齢別にみた賃金 | |
年齢 | 平均年収 |
~19歳 | 181.4千円 |
20~24歳 | 206.5千円 |
25~29歳 | 230.0千円 |
30~34歳 | 247.2千円 |
35~39歳 | 272.0千円 |
40~44歳 | 283.7千円 |
45~49歳 | 288.4千円 |
50~54歳 | 293.2千円 |
55~59歳 | 289.1千円 |
60~64歳 | 251.4千円 |
65~69歳 | 223.3千円 |
同じく、厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」による男女別の平均年収については、以下の結果となっています。
男性の平均年収の方が女性の平均年収よりも88万ほど高くなっています。
- 男性の平均年収:350.9千円
- 女性の平均年収:262.6千円
ポジション別の平均年収
では、もう少し詳しく、従事する仕事のポジション別の平均年収について確認していきましょう。
飲食業界は他の業界と同様に、仕事に役職が付いてくると、責任者の立場としてお店に深く関わっていくため給料も上がります。
これから飲食業界に転職を考えている方は、将来のビジョンを明確にして、管理職を目指したい場合は、勤続期間や資格の取得、経験などについて計画的に行動することで年収アップにも繋がっていきます。
ここでは、飲食業界で従事する「店長、調理スタッフ、接客スタッフ」の3つのポジションについて紹介していきます。
役職 | 店長 | 調理スタッフ | 接客スタッフ |
仕事内容 | お店の責任者として運営、
従業員の管理等を統括する |
食材の仕入れ、仕込み、
調理、を担当する |
お客様のオーダーを取ってホールの業務を担当する |
キャリア | エリアマネージャーから
本部職へ |
副調理長から調理長、
本部職へ |
ホール責任者から副店長、店長へ |
平均年収 | 約310万~420万円 | 約300万~420万円 | 約317万~375万円 |
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店長
店長と言っても、個人経営または大手チェーン店など、お店の規模や働き方、経験、お店の業種などからも年収が異なります。
一般的な給料の相場については、平均月収およそ25万〜35万円程度で、年収は、およそ310万円〜600万円以上と幅も広くなっています。
ただし、給料から保険料や税金などが控除されると、だいたい手取りで20万円〜30万円くらいが目安になります。
ボーナスは、年に2度、6月と12月に支給されるのが一般的です。
飲食業界のボーナスは、他の業界と比較して低い傾向があり、大手チェーン店であれば給料の1〜3か月分がおおよその目安です。
ただし、個人経営のお店の場合は、ボーナスなしのところもあります。
調理スタッフ
調理スタッフの給料については、平均月収およそ25〜35万円程度で、年収は、およそ300万円〜420万円くらいになります。
調理スタッフの業務は、お店の業態や働き方によっても異なるため、給料についてもそれぞれ変わってきます。
また、最初は調理スタッフとして入社しても、スキルを磨いて副調理長、調理長、本部職へと昇格することで給料アップも見込めます。
一流ホテルのレストランや有名なお店のシェフになると、年収1000万円を超える人もいます。
この場合は、見習いから数年〜10年ほどの期間を経てスキルを身に付けていくようになります。
接客スタッフ
接客スタッフの給料については、平均月収およそ24万〜31万円程度で、年収は、およそ317~375万円前後になります。
接客スタッフの場合も、お店の業態や働き方によっても変わってきます。
未経験者よりも経験があるとスキルが評価されることや、接客スタッフのリーダーになったり、業務に有利になる資格があると給料も高くなります。
また、接客スタッフから接客業のリーダーになって、副店長、店長と昇格してくると、
給料もアップしてきます。
飲食店で給料をあげる方法
飲食業で給料をあげる方法については、安定した勤務期間、従業員としてのスキル、お店の規模や業種の選び方などをしっかり押さえておきましょう。
給与条件が良くなるような転職先を選び、働き方や将来の目的なども明確にしておくことをおすすめします。
方法①一つの職場に長期間勤める
飲食業の仕事は、比較的誰もが始めやすい業務が多いため、継続して経験を積むことが
給料を上げる方法になります。
一つのお店に継続して勤めることで、経験とスキルが身に付きプロとして評価されると昇進や給与アップも期待できます。
お店のスタッフとして信頼を得ることができると、給料が上がることと仕事のモチベーションも高まり、満足できる働き方にも繋がっていきます。
方法②技術を磨く
飲食業界で技術を磨くには、料理分野や職種に合わせて一定期間の勤務が必要になります。
従来では、料理人として独り立ちするには、10年ほどの下積み期間が必要とされていましたが、最近では、最短で料理人になれるような育成マニュアルを完備しているお店を増えてきているため、若い年齢層にもチャレンジしやすくなってきています。
したがって、飲食業界での転職を考えている方は、転職先のお店の体制について確認し、長期間修行して技術を磨いていくか、または新しい体制でスタッフ育成を行っているお店を選ぶか、目的と技術を磨く方法について検討しましょう。
方法③資格を習得する
飲食業界では資格を取得すると、給料面で有利になります。
また、従事する業務内容に合わせて、資格を取っておくと仕事の幅も広がります。
以下は、取得しておくと有利になる主な飲食業の資格です。
資格 | 内容 | 資格種類 |
衛生管理者・第1種 | 労働者の健康障害を防止する資格(有害業務を扱える) | 国家資格 |
衛生管理者・第2種 | 労働者の健康障害を防止する資格(有害業務が扱えない) | 国家資格 |
食品衛生責任者 | 食品衛生上の管理運営を行うことができる資格 | 国家資格 |
調理師 | 調理技術や食に関する知識を証明する調理師法に基づく資格 | 国家資格 |
レストランサービス技能士 | 接客マナーやサービス、苦情対応等の技術を証明する資格 | 国家資格 |
菓子製造技能士検定 | お菓子を製造する技能や知識を証明するための資格 | 国家資格 |
フードコーディネーター | 専門知識や技術で食のトータルクリエイターとして活躍できる資格 | 民間資格 |
ワインソムリエ | ワインに関する専門的な知識を得てサービスを提供できる資格 | 民間資格 |
フードアナリスト | 食の情報や情報発信の専門家として活躍できる資格 | 民間資格 |
和食マイスター | 和食の基本的な栄養・調理・マナー・作法などを習得する資格 | 民間資格 |
方法④企業規模の大きい会社に転職する
飲食店の規模によっても、給料の条件が異なります。
一般的には、大手チェーン店や大規模なお店に就職した方が、年収が高くなる傾向です。
また、福利厚生や賞与などもしっかり完備されているところが多くなります。
一方、個人経営のお店や小規模のお店の場合は、大規模経営のお店よりも年収は低くなり、ボーナスがない場合もあります。
以下は、「厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査」結果による企業規模別の平均年収です。
- 大企業 :年収 346.0 千円(男性 386.7 千円/女性 274.6 千円)
- 中企業 :年収 311.4 千円(男性 341.6 千円/女性 262.5 千円)
- 小企業 :年収 294.0千円(男性 319.8 千円/女性 248.4 千円)
方法⑤平均年収の高い業種・職種に転職する
業種、職種ごとによっても平均年収が変わってきます。
業態としてお酒を提供するお店や深夜営業しているお店の場合、または、ある一定期間、職人としての技術が必要になる職種の場合は、平均年収が高くなる傾向です。
平均年収が高い業種 | |||
業種 | 平均年収 | 業種 | 平均年収 |
ガールズバー | 489万円 | 焼肉屋 | 399万円 |
スナック | 440万円 | 寿司屋 | 398万円 |
蕎麦屋 | 400万円 | 居酒屋 | 398万円 |
平均年収が高い職種 | |||
職種 | 平均年収 | 職種 | 平均年収 |
寿司職人 | 452万円 | シェフ | 404万円 |
料理人 | 418万円 | バーテンダー | 399万円 |
ソムリエ | 418万円 |
方法⑥独立開業する
飲食店で一定の期間、経験を積んで技術を身に付けることで将来的に独立を計画することも
年収アップする方法のひとつです。
独立するまでに、開業資金の調達、飲食店を営業するための資格「食品衛生責任者」「防火管理者」の取得、物件探し、事業計画の作成、各種手続き等、準備していく必要があります。
また、独立開業する際は、多店舗経営を行ったり、客単価を上げる方法や収容人数を増やす方法などで売上を上げること、経費削減を検討する等、高収入に繋がる体制作りも必要になります。
さらに、はじめて独立開業を行う場合は、独立支援制度・のれん分けなどを活用すると、
店舗運営のノウハウを得ながら開業できるので失敗のリスク軽減にために有効的な方法です。
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給与アップする条件を揃えて飲食店への転職を計画しましょう。
飲食業界は、他の業種よりも給料が低い状況ですが、転職する前に給与アップする条件を揃えることで、年収を高くすることも可能です。
転職するお店の規模や雇用体制などを確認し、経験や技術を磨くための勤続年数を経て、昇格や独立企業など将来の目的につなげていきましょう。